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地球環境
シーオーツー排出原単位と系統電力の環境性
田中 俊六(たなか しゅんろく)東海大学名誉教授

たなか しゅんろく プロフィール
東海大学名誉教授一九三八年三重県生まれ。早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学研究科博士課程単位取得。工学博士(はくし)。東海大学工学部建築学科教授、工学部長、学長を経て、二〇〇四年退官。著書『温対法と省エネ法の原単位問題-「全電源平均」と「火力平均」』『省エネルギーシステム概論』『図解ヒートポンプ地球温暖化防止とヒートポンプ・蓄熱技術』など。

シーオーツー削減へ実効ある取り組みが急がれるなか、「シーオーツー排出原単位」(シーオーツー排出係数)が注目を集めている。そもそも「シーオーツー排出原単位」とは、電気やガス、灯油などエネルギー使用に伴うシーオーツー排出量を計算する尺度となるもの。電気の場合、ユーザーが一キロワットジの電気を使う際に発電所で発生するシーオーツーの量を指し、例えば関西電力のシーオーツー排出原単位は、〇・三六六キログラム-(マイナス)シーオーツー/(バイ)キロワットジ(二〇〇七年度実績)。つまり、関西電力と契約しているユーザーは、これに電力使用量を掛ければ、自分が使用した電気によるシーオーツーの排出量がわかる。いわゆる「改正省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)」で指定された、一定以上のエネルギーを使う事業所には、「温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)」で年一回「シーオーツー排出量」の報告義務が課せられている。また、シーオーツーの排出を削減した場合には、その「削減量」を任意に報告・公表してよいことになっており、自らの環境対策の成果を強調したい企業は、この「シーオーツー排出削減量」についても積極的に公表し始めている。ところがここでおかしなことが起きる。本来なら排出量と削減量は同一の尺度(原単位)で測るべきだが、実は尺度が二つある。「シーオーツー排出量」の算定には「全電源平均(火力発電所からのシーオーツー排出量÷(わる)原子力・火力・水力など全発電所の発電量をもとにした販売電力量)」原単位を用いることが規定されているが、「シーオーツー排出削減量」の原単位については特に規定を設けなかったため、「全電源平均」だけでなく「火力平均(火力発電所からのシーオーツー排出量÷(わる)火力発電所の発電量)」原単位も用いられている。そのため、どちらの尺度を使うかで削減量に差が出てしまう。例えば系統電力(電力会社が供給する電気)からコージェネレーションシステムなどに切り替えた場合、大きな削減効果が得られると宣伝されることがある。この場合、コージェネ推奨側は、シーオーツー削減量の算出に「火力平均」の適用を主張。その論拠として用いられるのが「マージナル電源=(イコール)火力説」だ。つまり日本の系統電力は、原子力や水力がベース需要を担っており、コージェネ採用で系統電力の使用が減れば、火力発電を止めて対応するという「マージナル電源=(イコール)火力説」は、一見、正しいように思われる。しかしながら系統電力は、すべての需要の合計値に対して、経済性や応答性の異なる電源を適切に組み合わせて運用されており、特定のユーザーに特定の電源で供給しているわけではない。さらに言えば、系統電力のユーザーが契約を解約する際に火力を止めるのなら、契約を結ぶ際には火力を焚き増すことになるが、だからといって「あなたが入るとシーオーツーが増える」とペナルティを課すことなど、もちろんない。従って、新規契約の年に全電源平均でシーオーツー排出量を報告したユーザーが、契約を終了したからといって削減分だけ火力平均で報告するのは理屈に合わないし、尺度が違えば削減量が排出量を上回るという矛盾すら起きてくる。大事なことは、実効あるシーオーツー削減策であり、見せかけの削減量を増やすことではない。日本の電力会社は七〇年代の石油ショックを機に、化石燃料一辺倒からの脱却を目指し、電源のベストミックスを進めてきた。その結果、発電時にシーオーツーを排出しない原子力など非化石燃料の比率は、二〇〇六年度では約四割(関西電力は約五七%)となり、日本の系統電力は世界有数の「地球環境に優しいエネルギー」になった。私たちは、こうした「系統電力の環境性」を適切に評価し、温暖化対策を実効性あるものにするため、どのようなエネルギー源、どのような機器・システムを選択すべきかをしっかりと見極めていかねばならない。そしてそのためにはまず、正しい尺度で測ることが肝要であり、全電源平均での統一こそが当然だと考えている。

地球環境
ヒートポンプはなぜ環境に優しいのか
射場本 忠彦(いばもと ただひこ)東京電機大学教授

いばもと ただひこ プロフィール
東京電機大学未来科学部建築学科教授・理事、(株)空気調和・衛生工学会会長一九四七年鹿児島県生まれ。北海道大学工学部卒、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。東京電機大学工学部建築学科教授、工学部長などを経て、現職。著書『蓄熱式空調システム計画と設計』『躯体(くたい)蓄熱』『地中熱ヒートポンプシステム』など。 (財)ヒートポンプ蓄熱センター技術顧問も務める。

シーオーツー排出量削減ポテンシャルは約一・三億トン--温暖化対策の切り札とも言われる「ヒートポンプ」。しかし、ヒートポンプとは何か、なぜ環境に優しいのかについては、まだあまり知られていないように思われる。ヒートポンプはその名のとおり、空気中などにある熱(ヒート)を汲み上げ(ポンプ)、冷暖房や給湯などに利用するシステム。「熱」は温度の高いところから低いところへと自然に移動する。ヒートポンプはこの原理を応用したもので、しくみはいたってシンプル。システム内に冷たい部分と熱い部分をつくってやれば、勝手に「熱」が移動(汲み上げ)してくれるのだ。ではどうやって「冷たい部分と熱い部分」をつくるかと言うと、これも実は単純で、「気体は圧縮すると温度が上がり、膨張すると温度が下がる」という性質と、「液体は熱を与えると蒸発し気体に、気体は熱を奪われると凝縮し液体になる」という性質を利用しているだけ。例えばエアコンの場合、室内機と室外機を結ぶパイプ内に熱を運ぶ物質(=冷媒れいばい)を循環させ、これを膨張させたり圧縮したりすることで、冷房時には室内の熱がれいばいを伝って外に移動(室外機は熱くなる)、逆に熱を奪われた冷気が室内に吹き出される。暖房時はこの循環を逆にすればいい。そして、例えばCOP(消費電力量に対して得られる熱量の割合)が「6」のエアコンの場合、圧縮・膨張に「1」の電気エネルギーを使うだけで、「5」の熱を空気中から汲み上げることができるため、「1+(プラス)5=(イコール)6」の冷暖房効果が得られる。つまり、少ないエネルギーでより大きな熱を得られるのが最大の特徴。だからヒートポンプは「環境に優しい」のだ。しかも日本の系統電力は、発電時にシーオーツーを排出しない非化石燃料の比率が高く、化石燃料を使う火力発電も、最新のコンバインドサイクル発電などは発電効率が高い。だから「系統電力+(プラス)ヒートポンプ」の組み合わせは、極めて高効率で環境負荷の低いエネルギーシステムと言える。ヒートポンプの歴史は古く、既に百年ほど前から使用されていたが、特に近年の技術革新は目覚ましい。一九九九年の改正省エネ法によるトップランナー方式の採用で、COPは上昇のいっと。北海道など寒冷地で使用できる機種も登場している。また、熱交換を行うれいばいには従来、フロンが用いられていたが、近年はオゾン破壊係数ゼロの新冷媒が次々と登場。なかでもヒートポンプ式給湯機「エコキュート」で一躍注目を集めた自然冷媒シーオーツーは、もともと自然界にあるものだから、オゾン層も破壊せず、給湯加熱に適した特性を備えている。さらにヒートポンプの優れた点は、利用できる熱源が多いことだ。空気中の熱はもちろん、海水や河川水、下水排熱、地中熱など、大半の「ぬるい熱」が利用可能だし、その用途も空調や給湯、冷凍、冷蔵、乾燥、蒸気利用など多岐にわたる。「熱」というと熱いものを思い浮かべがちだが、絶対零度(マイナス二七三℃)以上の温度帯には「熱」が存在している。そういう熱を集めて活用するのがヒートポンプだ。このようにヒートポンプのポテンシャルは極めて高く、しかも日本のヒートポンプ技術は世界で最も進んでいる。仮に日本全体の空調・給湯需要をすべてヒートポンプ機器で賄った場合、削減できるシーオーツー排出量は約一・三億トン--京都議定書の第一約束期間に日本が削減すべき量の、実に八割以上(二〇〇六年度排出量をもとに算定)に相当する。ならばこれを活用しない手はない。産業分野に比べ対策が遅れている家庭や業務用分野のシーオーツー削減を推し進めるためにも、ヒートポンプの有効性を広く人々に訴え、普及を加速させることが、今こそ必要になっている。

 

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