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仕事ストーリー Project01 Project02
Project02 電力系統の中枢を制御せよ。
電気の生産から供給に至る一連の流れを統括コントロール

「・・・あちらの数字がリアルタイムの周波数です。その下のARという表示がArea Requirementの略で・・・」。海外からの研修派遣の技術者を迎え、児山は中央給電指令所の電光ボードの前で、よどみなく説明を続けていた。

中央給電指令所は、独特の緊張感に包まれている
中央給電指令所は、独特の緊張感に包まれている
中央給電指令所。関西電力の電力系統を365日24時間休まずコントロールしている統合管制施設である。その役割は大きく2つ。その1つが、時々刻々と変化する電気の使用量と発電量のバランスを保つ需給制御および500kVの超高圧送電線の系統操作だ。特に重要な役割となるのが前者の需給制御である。電気は貯えることができないという性質から、高品質な電力供給を実現するためには、常に電力生産−消費の同時同量バランスを保たなければならない。これが狂うと60Hzの周波数維持はできない。そこで、中央給電指令所では、関西電力が持つ約300台もの発電機をトータルにコントロールし、電気の需給制御を行っているのだ。


西日本全域の周波数制御を担う責任の重さと緊張感

2003年2月、中央給電指令所に配属された児山は、ほどなく需給制御をメインで担当する周波数調整席に座ることとなった。目の前には、刻々と変化している周波数の表示。実はこの周波数は中部以西の西日本全域の周波数を示している。他電力会社の需給制御と互いに影響・連携しあって西日本全域で周波数を維持しているのだ。周波数制御には、負荷変動による周波数偏差を検出して発電機の発電量を自動制御する「自動周波数制御システム(AFC)」や、日々の需要予測をもとに経済性を追求した最適な発電配分を行う「需給制御システム(ELD)」といった最先端の制御システムが駆使されているが、例えば昼の12〜13時など激しく使用量が変動する時間帯や、予想外の使用量変動に対しては、需給制御担当者が瞬時に判断して対応しなければならなくなる。

児山は、西日本全域の周波数制御を担うというあまりの責任の重さに、緊張感でいっぱいだった。周波数の目標値は60Hz。+−0.1Hz内で95%以上の滞在率を目指す。+−0.1Hzを超えると、軽くアラームが鳴る。さらに+−0.2Hzを超えると、緊急を知らせる重度のアラームが鳴る。周波数が高く振れると発電所に出力ダウンの指令を出し、低く振れると出力アップの指令を出しながら、大きく振れないよう一定の周波数を維持するのが需給制御メイン担当の役目だ。8時間もの間、経験したことのない緊張感のなかで過ごし、児山の周波数調整席初日は終わった。その夜、児山は周波数を0.2Hzはずしてアラームを鳴らしてしまう夢を見た。そして、あろうことか、その夢は正夢となってしまう。

通常業務に移った今でも、責任の重さは変わらない
通常業務に移った今でも、責任の重さは変わらない
少しは需給制御にも慣れてきたかと思った頃、周波数調整席に座る児山をある事故が襲った。他電力会社の電力系統の影響を受け、関西電力の周波数も大きく乱れ、みるみるうちに低下していったのだ。児山は予想だにしなかった事態に、頭が真っ白になった。あっという間に周波数は-0.2Hzのボーダーを越え、中央給電指令所にアラームが鳴り響いた。通常、こうした周波数異状時には、関西電力がリーダーシップをとって、他電力会社と連絡をとりあい協力しながら周波数を正常値に戻していくのだが、初めての経験に児山は自分がどう動けばいいのか判断できずにいた。結局、児山の隣に座っていたチーフが児山に代わって他電力会社に状況確認し、的確な対応を行って事なきを得た。「この時は、自分が関西全体の周波数調整の全責任を担っているという自覚が足りないと、指令長から厳しく指導を受けた。自覚はあったつもりだったが、完全に責任を持ちきれないでいたことを痛感した。この経験を通して、本当の意味で自分の仕事に責任を持ち、最後まで業務をやり遂げる姿勢が身についたと思う」と児山は振り返る。


高品質な電力供給を実現する全発電機の司令塔

中央給電指令所2つの役割のもう一方が、発電所の運用計画だ。関西電力が独自に収集した気象データや社会動向をもとに電気の使用量を予測し、それに対して、運転する発電機と発電時間を決めていく。運転コストの安い原子力や水力をベースに、残りを火力や揚水式発電、他社融通で分担するのが基本だ。計画は月間、週間と徐々に総需要量を、細かく緻密に計算していき、最終的には、翌日の電力需要が24時間でどう変動するかという需要ロードカーブに基づいた翌日計画をはじき出す。予測の精度向上はもとより、求められる電力需要に確実に応えるという大前提のもと、もっとも経済的で信頼度の高い運用を実現するのが、中央給電指令所に課せられたもう一つ使命だ。

運用計画の立て方次第で、石油、石炭、LNGなどの火力燃料の消費量は大幅に変動するので、調達して来なければならない燃料の量も劇的に変わってくる。特に電力は気候の変化に敏感に反応し、日々変動する不確実な要素を含む。この春、中央給電指令所は、今年は想定以上の猛暑が訪れると予想した。その結果、火力発電の主燃料であるLNGが不足してしまうというのだ。

この非常事態に対応し、LNG調達のミッションを受けるのが、梶山の所属する燃料室である。梶山の担当はまさしくLNGの調達。通常LNGは、リードタイムが5〜10年の長期契約に基づいて調達しているが、気候の変化に敏感に反応する電力需要の変動により、短期間に契約を締結するスポット調達も柔軟に行う。旺盛な需要により売り手が強くなるスポットLNG市場におけるタイトなスケジュールの契約交渉は非常にタフなものだが、燃料がなければ発電所に火は灯らない。「この夏の電気が、自分の燃料調達手腕にかかっている。」梶山は、プレッシャーと使命感を背負いながら、スポット市場からのLNG調達契約の締結に成功した。無事LNG船の受け入れを済ませた時、港で梶山はほっと胸をなで下ろした。電力安定供給の最も上流でサポートしているのが梶山をはじめとする燃料室のメンバーなのである。

中央給電指令所の仕事において、他部署との連携は欠かせない要素
中央給電指令所の仕事において、他部署との連携は欠かせない要素
燃料があって初めて、思う存分に発電機の並列・解除や出力調整といった需給制御のための指令が、中央給電指令所から各発電所へ、オンラインやタッチパネルあるいは電話によって伝えられる。姫路第二発電所発電室に勤務する中田は、そうした中央給電指令所からの指令を受け取って、発電ユニットの起動や停止のプラント運転・操作を行っている。ある日の午前4時、姫路第二発電所。人々が活動を開始する朝の電力需要の伸びに対応するため、中央給電指令所の指令のもと、中田は発電所の中央制御室で4号機のボイラ給水ポンプの起動を試みた。が、起動しない。何かトラブルが発生したようだ。中田は原因究明のため、先輩とペアで現場へ向かった。その間、発電所中央制御室の所員は急いで基幹系統給電所へ「4号機の起動が遅れそうだ」と連絡を入れた。その連絡はすぐに中央給電指令所へ伝わった。刻一刻と朝が近づいてくる。夜が明ければ一気に電力使用量が上がる。時間的余裕はない。中央給電指令所の判断は「代わりに3号機を並列する」。指令を受けた姫路第二発電所はすぐに3号機を起動し、結局、お客さまへの供給には支障を来すことはなかった。中央給電指令所は、常に発電所と密に連絡をとりながら、全発電機の状況を把握し、発電所運用を行っているのだ。そして発電所は指令通りに発電機を起動/停止させることができなければ、中央給電指令所の想定する系統運用計画に重大な影響を及ぼす。

「1週間前倒しか・・・」。姫路第二発電所の保修課に所属する小林は、中央給電指令所からリクエストされた修繕工事時期に合わせるべく、スケジュール調整に追われていた。保修課は、いつでも発電機の起動・停止に対応できるよう、発電所機器の保守、修繕を担当するメカニックチームだ。修繕が必要になった場合、まず中央給電指令所へ、修繕に係る内容や工期などの報告・交渉を行う。それに対し中央給電指令所では、予測される電力需要に応じて全体の発電所運用を考慮したうえで、修繕工事の最適時期を検討し、発電所へ要望を出す。今回の修繕案件では、発電所から提示された工期よりも1週間前倒しが望ましいと判断したのだ。小林はそのリクエストを受け、機器メーカーなどもとりまとめ、何とか1週間前倒しで工事をやり遂げた。中央給電指令所が行う全体視野による系統運用を、現場の発電所の技術者一人ひとりが支えている。
SIDE STORYさらに広く大きな視野で系統運用の進化に携わる

その後、需給制御を行う当直業務から通常業務へと異動になった児山は、現在、自由化対応での社内ルールの整備や、日々の運用の技術的検討、社外からの技術研修者への対応業務などを行っている。今はもう、周波数をはずして鳴り響くアラームの夢を見ることはない。だが、電力系統を統括コントロールするセクションに所属する者としての自覚は、当時とは比べものにならないほど確固たるものとして、しっかりと児山の胸の内にある。

系統運用関連図

中田 博之
中田 博之
姫路第二発電所 発電室
2004年入社
工学研究科
物質エネルギー化学専攻修了
現在担当している主な業務は、現場の設備に異状がないかをチェックする点検業務と、中央制御室における発電ユニットの起動・停止などの操作業務です。なかでも重点を置いているのは点検業務。モーターの異常振動や異音などを早期発見することで、発電ユニット全体を止めるような事態を引き起こさないよう心がけています。すべては、お客さまに良質で安定した安い電気を供給するためと思って、日々、業務に取り組んでいます。

小林 健一
小林 健一
姫路第二発電所 保修課
2002年入社
工学研究科
機械知能工学専攻修了
保修課の仕事は、発電に必要な多数の機器を保守・修繕することです。定期的な点検・振動測定により機器の状態を管理するとともに、発電室より不具合として報告のあった機器の修繕を行います。私自身は、ボイラ関連機器を担当しており、必要に応じて、それらの修繕方法検討・作業準備、工事立ち会い・工程管理などに取り組んでいます。中央給電指令所とは別に、現場でまさに動いているモノを管理する立場として責任とやりがいを感じています。

梶山 浩
梶山 浩
燃料室 LNG調達グループ
1998年入社
法学部卒
燃焼室は、石油、石炭、LNG(液化天然ガス)といった火力発電燃料の調達を担当する部門で、そのうち私はLNGを購入する際の契約の締結および管理、運用の業務を担当しています。燃料調達や燃料運用には、タンクの容量や輸送船の運航スケジュールなど、さまざまな制約条件がありますが、そのなかでいかに柔軟で経済的な調達・運用ができるかが燃料室の業務のポイントとなります。電力自由化に打ち勝つため、より有利な条件での燃料調達をめざして頑張っていきたいと思います。
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