日本人は昔から四季の移ろいを肌で感じて過ごしてきました。とりわけ蒸し暑い夏は涼しく過ごすためのさまざまな工夫が衣食住に凝らされています。伝統的な和菓子もそのひとつ。今回は、味わいも見た目も涼しげで、暑さをひととき忘れさせてくれる夏の和菓子についてお届けします。
四季折々の風物を写した和菓子は、味わいと見た目の両方から季節を楽しむことができます。夏らしい涼しげな和菓子の数々をご紹介しましょう。
寒天は、夏の和菓子には定番の素材です。冷たくしていただけば、涼しさがいっそう増します。

種に見立てた小豆入りの紅ようかんと緑の琥珀かん(=錦玉かん)で、西瓜の涼感、みずみずしさを表現しています。(写真提供:とらや)
ツルリとした食感で透明感のある葛も、夏の和菓子には欠かせません。特に葛まんじゅうは葛に色を付けたり、あんの色合いの工夫で、さまざまな表情を演出できます。

赤色のあんが入った葛まんじゅう。葛の表面に粉をふり、中のあんがほのかに透ける様子から、夏の薄い衣を表現しています。

葛の生地で緑色のあんを包み、清流にゆらめく藻の花に見立てています。「水仙」とは、葛製を表す言葉です。(写真提供:とらや)

残暑厳しい中にもほのかに秋の気配を感じさせるお菓子です。黄色と紅色のあんで平安貴族の衣装のかさねの色「紅葉重」を表しています。
(写真提供:とらや)

ところてんのように突き出したくずきりに、北野天満宮の梅を使ってつくった梅蜜をかけていただきます。涼しげな透明感と、梅の酸味が涼を誘います。(写真提供:老松)
和菓子は家庭でも手軽につくることができます。お子さんと夏休みの思い出に、手づくり和菓子を楽しんでみませんか。

この分量でグラス18個分(1個80グラム程度)の水ようかんがつくれます。容器に流し込むのが早すぎるとあんと寒天が分離し、遅すぎると半固まりになるので注意しましょう。
糸寒天6グラム、水600cc、グラニュー糖150グラム、
小豆あん(こしあん)700グラム、食塩2.5グラム
- 一昼夜水に浸した糸寒天を水切りした後、水洗いして鍋に入れ、分量の水を加えて火にかけます。
- 沸騰して完全に溶けたら砂糖を加えます。
- 沸騰して砂糖が溶けたら、小豆あんを入れて木べらで混ぜ、さらに沸騰したら食塩を混ぜて火から下ろします。
- 目の細かいふるいでこし、容器を水に浸して熱を取りながら静かに木べらでかき混ぜます。このとき、周囲や底が固まりかけたら、木べらでこそげて混ぜます。
- 40度くらいに冷えたら容器に流し込んで固めます。
白あんを色粉で染めて使えば、さまざまな色の葛まんじゅうが楽しめます。材料は

葛100グラム、砂糖200グラム、水450cc、
あん700グラム
- あんは1つ25~28グラム程度に小分けしておきます。
- あん以外の材料をすべて容器に入れてよく混ぜます。
- 2を目の細かいふるいでこし、鍋に入れて火にかけます。
- 木べらでかき混ぜながら加熱します。(火が通るにつれ、餅のようになってくるので、火を弱め焦がさないよう注意しましょう)
- 全体にもっちりしてきたら、つやが出るまでよく混ぜます。
- 5の葛生地を熱いうちに木べらで取り、あんを包みます。
※ あんを包むときには、葛が手につきにくくするため、手水を用意します。葛は熱いのでやけどしないよう注意しましょう。葛生地を取る人と、あんを包む人とに作業を分けると効率よくつくれます。

夏の和菓子はひんやりとした口当たりやなめらかなのどごしで涼を誘うだけでなく、水や渓流、緑の木陰など、見た目でも涼しさを演出しています。和菓子のほかにも、風を通しながら日差しをさえぎるすだれや、打ち水、耳から涼を感じる風鈴など、伝統的な夏の風物誌には、空調のなかった時代、五感のすべてで涼しさを味わおうという先人の知恵がうかがえます。
こうした四季折々の風物詩は暮らしに彩りを添えてくれるだけでなく、そこには地球にやさしいナチュラルでエコな生活のヒントがちりばめられているようです。私たちも自然なままに毎日を心地よく過ごせるアイデアを、うまく取り入れていきたいものですね。
関西電力のウェブサイト「ナチュラルびとになろう。」では「ありのままの暮らしが心地よいものであるとともに、環境にやさしいものになる」というライフスタイルを提案しています。季節的な情報をお届けしている「slowly&timely」のバックナンバーでは、浴衣の装いなど夏を涼しく過ごす暮らしの工夫をはじめ、季節ごとのさまざまな情報をご紹介していますので、ぜひご覧くださいね。
有職菓子御調進所 老松 泉寿満さん

京都で一番古い花街・上七軒に暖簾を掲げる明治41年創業の和菓子屋。古来より朝廷に伝わる儀式や典礼に用いられる有職菓子を今に伝えながら、季節の移ろいを表す茶席菓子などを製造しています。一方で広く一般の人にも和菓子文化を伝えるため、お店では「和菓子教室」も開催。自分でつくった和菓子は試食のほか、持ち帰りもできます。夏柑糖(販売時期は要問い合わせ)をはじめ上七軒の花街にちなんだ団子や、北野天満宮の梅を使った和菓子など、地元に根ざした和菓子づくりを続けています。
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株式会社虎屋
室町時代後期、京都にて創業、後陽成天皇の時代から御所の御用を務めています。東京遷都に伴い、京都の店はそのままに東京へ進出。赤坂に本店を置き、定番商品で江戸時代からつくられているようかんや最中をはじめ、季節の和菓子を製造販売しています。また、パリにも店を構え、和菓子文化の発信にも力を注いでいます。
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