近年、自然保護への関心の高まりとともに、動植物の生息空間を意味する「ビオトープ」という考え方が広く知られるようになってきました。実は、都市の中でも、さまざまな生物との新鮮な出会いが期待できます。皆さんもご自宅の庭やベランダなどの身近なところに、人と自然が共存する空間を作ってみませんか。

関西電力 堺港発電所
「ビオトープ」とは、生物を意味する「Bio」と、空間や場所を意味する「Tope」を合成したドイツ語です。簡単に言い表すと「野生生物のすみか」のことで、池や干潟などの水辺に限らず、森や草原、里山や田んぼ、公園緑地まで、動植物が生息可能な空間すべてをビオトープと呼んでいます。
人々の関わりからみたビオトープは次のように、2タイプ、6つの型に分けることができます。
自然をあるがままの形で維持し、保存します。
例:外来種などから在来種を守り、天然記念物を保護している地域など
里山など、人が利用しながら動植物とうまく共存します。
例:雑木林の利用管理、里山、田畑など
人の立ち入りを禁止し、原生林など自然をあるがままの形で残します。
例:立ち入り制限区域など
荒れた自然に人の手を加えることにより、本来の豊かな自然の姿に回復させます。
例:廃田の再水田化など
都市や工場地など、自然がいったん失われた空間を緑化し、自然を取り入れます。
例:都市の緑化、水辺再生など
何もないところに新しい自然を作り出します。
例:埋立地の緑化整備など
ビオトープとしてよりよい環境を維持し、活性化させるためには、(1)面積はなるべく広いほうがよい、(2)同面積なら分割されているよりも一つにまとまっているほうがよい、(3)分割する場合には、近接しているほうがよい、(4)離れているビオトープは、緑地帯などでつないだほうがよい、(5)ビオトープの形は円形に近い形のほうがよい
などの原則があります。
行政では、近年この原則を踏まえて、公園と公園を道路脇の街路樹のような緑地帯でつないで生態回廊を確保するなど、生物が自由に行き来できるスペースを広げる緑化政策がとられています。

ツマグロヒョウモン
庭やベランダにビオトープの機能の一部を取り入れることで、野生生物がくつろぎ、立ち寄れる空間を作り出すことができます。本来、ビオトープには野生生物の一生を通じた生息環境を兼ね備えることが必要で、個人で創り出すことは難しいものですが、「ビオトープガーデン」なら狭いスペースでも、植える植栽や水場などを工夫することで、りっぱな野生生物のオアシスを作ることができます。

アゲハ 幼虫
手軽に始められるバタフライガーデンをご紹介します。蝶は花の蜜を吸い、幼虫は葉を食べますが、蝶の種類によってエサの好みが違います。蝶が好む草花を園芸に取り入れ、蝶をお庭やベランダに呼び込めば、花と蝶の両方を楽しめます。
最初は蜜源植物を集めた園芸からスタート、慣れてきたら幼虫が好む食草を集めた園芸にしてみましょう。蝶が卵を産みにやってきて、蝶の生育観察を楽しめるかもしれません。
| 植物名 | 花の季節 | 蝶の種類 |
| ブッドレア | 春~秋 | アゲハ、ベニシジミ、キタテハ、モンシロチョウ |
| シモツケ | 春~夏 | ホンミスジ |
| ラベンダー | 春~夏 | モンキチョウ |
| ウツギ | 春~夏 | スジグロスジチョウ |
| ミント類 | 夏 | モンシロチョウ![]() |
| ランタナ | 夏 | アゲハ |
| オミナエシ | 秋 | イチモンジセセリ |
| ヤマハギ | 秋 | ルリシジミ、ウラナミシジミ |
| ヨメナ | 秋 | タテハ類 |
| 植物名 | 花の季節 | 蝶の種類 |
| サンショウ | アゲハ、クロアゲハ、キアゲハ | |
| 柑橘系(レモン・みかん類など) | アゲハ、クロアゲハ、キアゲハ | |
| ミツバ | キアゲハ | |
| パセリ | キアゲハ![]() |
|
| シロツメグサ | モンキチョウ、ツバメシジミ | |
| ヤマハギ | 秋 | ルリシジミ、ウラナミシジミ |
| ビオラ、スミレ | 春 | ツマグロヒョウモン |
- プランターまたは植木鉢
- 園芸用土と鉢底土(プランターや植木鉢に見合う量)
- 苗(蜜源植物の表などを参考に、蝶が好む花で、地域、季節に応じたものを選びます。家の周辺で蝶がどんな花にいるか、観察してみるとよいでしょう)

- 鉢底に鉢底土を鉢の2分目ほど入れ、上から園芸用の土を5分目ほど入れます。
- 苗をレイアウトします。背の高いものを後ろに置き、背が低いもの、茎や葉がツル状または垂れ下がって成育するものを前に置きます。
- レイアウトが決まったらポットから苗を取り出して並べ、土を鉢の8分目まで足します。
- 水やりをして、できあがり。
- プランターや植木鉢は大きいほど、植栽にバリエーションをもたせることができます。
- 全般的に、蝶は羽が妨げにならないような、蜜を吸いやすい小花や蜜源がくぼんでいない形状の花を好みます。
- 蝶によって花の色に好みがあります。モンシロチョウは青紫など、アゲハは赤など。多くの蝶が集まりやすいのは赤紫色の花です。
- 日当たりや水やりなど、相性のよい植物を寄せ植えしましょう。
- 土が乾いたら、水をたっぷりやります。
- 適宜、肥料を施します。
- 花がらをまめに摘み取ると、花がつきやすくなります。

花の蜜で蝶を呼び込むことができたら、次は産卵場所を探す蝶のためのバタフライガーデンを作りませんか。いもむしや毛虫は、苦手な人も多いかもしれませんが、都市部は産卵場所が少なく、花より食草でガーデンを作るほうが、蝶を呼び込みやすいといえます。
用意するもの、作り方は、「花があふれるバタフライガーデン」と同じです。苗は食草として、蝶の幼虫が好むものを寄せ植えします。
- ハーブ類を選べば、料理などにも役立てられ、より一層楽しめます。
- 幼虫のうち、さなぎを経て成虫になるのはほんの1%程度で、ほとんどは小鳥などに食べられます。それでも、幼虫が増えすぎて気になるようなら、置き場所や食草を変えてもよいでしょう。
- 小皿などの浅い容器に水を用意しておくと、ほかの昆虫や小鳥の水場になるうえ、そうした生物が幼虫を適度に食べてくれます。特に都市部は浅瀬の水場が少なく乾燥しがちなので、恰好の休憩場となります。ただし、蚊の発生を防ぐために、水は毎日取り替えましょう。
関西電力では、安心され、信頼される環境先進企業を目指し、生物の多様性の保全につながる取組みを行っています。発電所などの事業所では、その地域にふさわしい植栽を整備するとともに、ビオトープを造成するなど、緑化を推進しています。

関西電力 姫路第一発電所
また、姫路第一発電所内のビオトープでは、地元の小学生たちとゲンジボタルの幼虫を放流する自然観察会を実施。次世代層の環境教育に役立てるとともに、地域の人々にビオトープを開放することで自然とふれあえる憩いの空間を提供しています。

株式会社環境総合テクノス
環境総合テクノスは関西電力グループの環境エンジニアリング企業です。地球環境保全対策や自然再生・修復事業、土木・建築事業のための基礎情報の調査・診断から工事、メンテナンスまで、環境・土木・建築の3分野を連携した高品質で付加価値の高いサービスを提供しています。関西電力事業所のエコロジー緑化やビオトープ造成も同社が担っています。
サイトはこちら

株式会社グリーンスタジオ 造園部 寺西信昭さん
大阪・千里にあるグリーンスタジオはガーデニング・造園をはじめ、ビオトープづくり、屋上緑化、緑のカーテンなどを手がけています。これまでに学校、幼稚園などのビオトーププロデュースを行ってきました。
「家庭で行うビオトープガーデンは本来の大自然とは違いますが、自然科学に興味を持つきっかけになってくれればうれしい」と寺西さん。生物を世話することで心も癒され、パワーをもらえると話します。
サイトはこちら




