遷都1300年という壮大な歴史に彩られた奈良には、世界遺産に登録されている名所や旧跡のほかにも、現存する最古の和歌集・万葉集に詠まれた風景など、歴史を体感できる数多くの見どころがあります。こうした場所を訪れるのに便利なのが自転車です。自転車道やレンタサイクルを活用して、風を感じながら、いにしえの文化や心に触れる旅を楽しんでみませんか。

「ならサイクリングロード」は奈良県内を南北に縦断する3本の自転車道(奈良自動車道・大和中央自動車道・飛鳥葛城自動車道)です。周辺には世界遺産から風光明媚な公園までさまざまなスポットがあり、幅広い楽しみ方ができます。
「ならサイクリングロード」沿いは、標識なども整備され、走りやすくなっていますが、一部一般道と共有する部分もあるので安全には十分注意し、交通ルールを守って走行しましょう。
奈良県土木部道路・交通環境課が提供している自転車道のマップには、ルートのほか、レンタサイクルの拠点やコンビニ、トイレ、公園などの場所も示されています。
さあ、マップを手に、自転車で観光に出かけましょう!
「奈良自転車道」は近鉄奈良駅から斑鳩町の法隆寺までをつなぐ21.9キロのコースです。鹿たちが遊ぶ奈良公園や東大寺、春日大社から平城宮跡を経て、唐招提寺や薬師寺などの世界遺産が点在する秋篠川沿いを通り、桜の名所の郡山城跡脇を抜け、斑鳩の法隆寺へと至ります。

奈良公園内にある藤原不比等(ふじわらのふひと)ゆかりの寺で、
春日野に 煙立つ見ゆ をとめらし 春野のうはぎ 摘みて煮らしも /作者不詳
「春日野に煙が立つのが見えます。若い女性たちが春の野のヨメナを摘んで煮ているのでしょうか」という、奈良公園や春日大社の一帯、春日野の春遊びの様子を詠んだ歌です。

1300年前、平城京の大内裏が置かれた場所で、東大寺などとともに世界遺産に登録されています。朱塗りの朱雀門と大極殿、東院庭園などが復原され、往時をしのぶことができます。
たち変り 古き都となりぬれば 道の芝草 長く生(お)ひにけり
/田辺福麻呂(たなべのさきまろ)
都が移り、平城宮は古い都になって、道の草も長く伸び、わびしい、という気持ちを詠んだ歌です。現在、平城宮跡は「平城遷都1300年祭」のメイン会場として賑わっています。
奈良時代に創建された、鑑真和上(がんじんわじょう)ゆかりの寺です。国宝の金堂は10年間の解体修理を終え、通常参拝できるようになっています。毎年6月5日、6日は鑑真和上の命日に当たる開山忌が行われ、普段非公開の国宝の鑑真和上坐像と東山魁夷(ひがしやまかいい)筆の御影堂(みえいどう)障壁画が6月5日~7日の間のみ公開されます。
天武天皇によって創建された由緒あるお寺で、国宝の薬師三尊像はじめとする数多くの文化財が伝えられています。国宝の東塔を2010年10月31日まで特別公開中で、初層内陣の天井絵を見ることができます。また、2011年1月1日まで玄奘三蔵院伽藍(げんじょうさんぞういんがらん)、大唐西域壁画殿を公開しています。
聖徳太子こと厩戸皇子(うまやどのおうじ)ゆかりの寺院でユネスコの世界遺産に登録されています。2010年6月30日までと9月11日から11月30日まで、「法隆寺秘宝展」を開催。普段見られない貴重な寺宝を目にするチャンスです。
「大和中央自転車道」は県立浄化センター公園を出発し、飛鳥川沿いに南下します。途中、やすらぎ公園、県営福祉パークなどの公園にも立ち寄れ、ゆったり自然とふれあったり、軽いスポーツを楽しんだりするのに適した21.2キロのコースです。

橿原市の今井町は、城塞都市の名残である濠(ほり)が今も町の周囲を巡り、江戸時代の風情を伝える民家が約500軒も残されています。そのうちの8軒は国の重要文化財にもなっており、昔の台所や黒光りする柱、太い梁など、時代を感じさせる建築が保存されています。
馬見丘陵の古墳群を包み込むように作られた公園で、緑を楽しむとともに、古代の遺跡を体感できます。この公園をメイン会場として、2010年9月18日から11月14日までの間、「第27回全国都市緑化ならフェア やまと花ごよみ2010」が開催されます。
橿原神宮は古事記・日本書紀で初代天皇とされている神武天皇を祀った神社です。大和三山の一つ、畝傍山(うねびやま)の麓にあり、緑に囲まれた参道を心地よい風が行き渡ります。

春過ぎて 夏来(きた)るらし 白栲(しろたえ)の
衣干したり 天の香具山(かぐやま) /持統天皇
「春が終わり、夏がやってきたようです。白い夏の衣が干されています。あの天香具山に」という、天香具山を詠んだ有名な歌です。天香具山は大和三山の一つで、大和中央自転車道のやや東にあるなだらかな山です。
飛鳥の石舞台古墳から大和郡山市小泉町の富雄橋に至る30.0キロの「飛鳥葛城自転車道」は途中、橿原神宮前で大和中央自転車道と、富雄橋で奈良自転車道と連絡します。猿石や亀石などの石像物や、少し足を伸ばせば、キトラ古墳や高松塚古墳など、あちこちに文化遺産が点在する見どころの多いコースです。

蘇我馬子の墓と言われる古墳です。7世紀頃に作られたとされる方墳ですが、盛り土が残っておらず、平らな石が露出しているところから石舞台と呼ばれます。
うつそみの 人にある我れや 明日よりは
二上山(ふたかみやま)を 弟背(いろせ)と我が見む
/大伯皇女(おおくのひめみこ)
大伯皇女の弟・大津皇子は謀反の疑いで処刑され、二上山に葬られました。「この世にまだ生きている私は、明日から二上山を弟と見るのでしょうか」というこの歌は、その時の嘆きを詠んだ歌です。石舞台古墳から西を見ると、遠くに二上山を望むことができます。
聖徳太子誕生の地で、聖徳太子建立七大寺の一つと言われます。現在残っている伽藍は江戸時代以降のもの。境内には人の心の善悪二相を表したと言われる二面石があります。

巨大な花崗岩の表面に円形や溝などの彫刻が施された石造物です。酒造りに使われたと言われ、この名がつけられました。周辺からは石組みの溝や木桶などが見つかっており、水に関連するものと考えられています。
蘇我馬子によって創建されたお寺で、日本最古の仏教寺院、法興寺が前身です。本尊の釈迦如来像は重要文化財で鞍作止利(くらつくりのとり)作とされ、飛鳥時代の建造からずっと同じところに安置されていることがわかっています。高さ3メートルもあるところから、飛鳥大仏と呼ばれています。

明日香川 瀬々の玉藻の うち靡(なび)き
情(こころ)は妹に 寄りにけるかも /作者不詳
「飛鳥川の瀬々に生えた藻がなびくように、私の心は恋人の方になびいているんだよ」と、流れの速い飛鳥川の藻がなびく様子を自分の心に例えた歌です。明日香村から北へ流れる飛鳥川は、一部自転車道と並行するところもあります。
レンタサイクルは近鉄奈良駅・大和西大寺駅、JR法隆寺駅や斑鳩町内、JR郡山駅、近鉄橿原神宮前駅・岡寺駅・飛鳥駅・田原本駅・池部駅などで借りることができます。
また、平城遷都1300年祭に合わせて、平城宮跡会場でも期間中自転車の貸し出しがあり、近鉄奈良駅・大和西大寺駅・西の京駅でも返却できます(会場内は自転車で走行できません)。さらに、夏と秋のフェア期間には、マイカー利用者向けのサービス「古都りん」として、九条公園の特設駐車場に無料の電動アシスト自転車50台も用意されます(駐車場利用には運営協力金が必要です)。
地球温暖化問題への対応として、社会全体で貨物や人の輸送手段の転換を図る「モーダルシフト」への取り組みが始まっています。例えば、自動車、航空機などによる輸送を鉄道や船舶に変えることで、省エネ効果のほか、二酸化炭素の排出抑制や、排気ガスなどの環境負荷を低減することが期待できます。もちろん、観光のための移動手段を自動車から自転車にするというのも、モーダルシフトの一つです。
関西電力は「エネルギーの使用の合理化に関する法律」によって国から特定荷主の指定を受け、貨物輸送にかかるエネルギー使用量などの管理、報告を適切に行っています。国内の貨物輸送に関しては、化石燃料の運搬を中心に船舶輸送の割合を上げるモーダルシフトが進められ、環境負荷の低減に努めていますが、今後も貨物輸送のエネルギー使用量を減らすために努力していきます。
奈良県 土木部 道路・交通環境課
県内各地に見どころがある奈良は、自転車での観光がちょうどいいエリアです。サイクリングロードは現在、西部を中心に整備されていますが、今後さらにこのネットワークを広げようと、昨年度から検討委員会を立ち上げ、ネットワーク拡大のための実験も行っています。将来的には東部にもサイクリングロードを整備し、ネットワーク化されたサイクリングロードにより、奈良県全体を広域に周遊できるようになればと考えています。
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