地野菜をもっと身近に ~京都の伝統野菜~

昔から流通が盛んであった関西は、全国からさまざまな食材が集まる地域でした。ほかの土地から入ってきた野菜が風土に合わせ形を変えて根づいたものもあります。今回は京野菜の中から特によく知られたものや、 これからが旬のものを中心に、代表的なレシピとあわせてご紹介します。

写真提供/京都 錦かね松

京野菜ってどんな野菜?

794年から日本の都として長く栄えた京都は、海から遠く離れていたため、野菜が食文化の中心でした。 そうした長い歴史の中で選別され、大切に受け継がれてきたのが京野菜です。

味の秘密は土にあり 京野菜の魅力は、なんといってもその味にあります。京都では周辺部の嵐山や太秦、嵯峨野、伏見などに生活から出る不要物を処分していました。その結果土地が肥え、味のよい野菜がはぐくまれてきました。
季節感たっぷり 季節感も大きな魅力の一つです。通年で手に入りやすい一般の野菜にくらべ、京野菜にはまだまだ季節限定のものが多く残っています。夏のみずみずしい賀茂なす、冬にはとろけるような口あたりの聖護院だいこんなど、その時期ならではの野菜を味わうことで、季節の訪れを感じさせてくれます。
年中行事にも欠かせない 京都では、ずいき(里芋の茎)で屋根を葺(ふ)いた神輿が奉られる、北野天満宮の「ずいき祭り」や、 中風(ちゅうふう)封じを祈願してかぼちゃがふるまわれる、安楽寺の「かぼちゃ供養」などの行事で野菜が登場します。そのほか伏見稲荷の「初午(はつうま)」では「はたけ菜のからし和え」を食べるなど、 季節ごとの祭りやイベントと野菜が深く結びついているのも特徴といえます。
地名のついた野菜と原産地の例
[1] 伏見とうがらし
[2] 賀茂なす
[3] 鹿ケ谷かぼちゃ
[4] 壬生菜
[5] 九条ねぎ
[6] 聖護院だいこん
[7] 堀川ごぼう
[8] 柊野ささげ
[9] 七条せり
[10] 鷹峯とうがらし
地名のついた野菜と原産地の例

※[1]から[6]の野菜名をクリックすると詳細がご覧いただけます。

京野菜いろいろ

京野菜の多くは現在、郊外で栽培されています。 それでも、もとの名前とともに京野菜独自の味は受け継がれ、今日でも京の食卓に季節の彩りを添えています。

伏見とうがらし
伏見とうがらし 10~15センチの細長い、先の尖ったとうがらし。柔らかくて辛味がなく、独特の風味があり、焼いたり炒めたり、素揚げや天ぷらにしてもおいしくいただけます。 現在は、一年を通して流通していますが、旬は夏です。

【産地】伏見、宇治、山城など
【旬】 6~9月
とうがらしとおじゃこのたいたん
伏見とうがらしを炒め、じゃこを加えてさらにさっと炒めます。酒・しょうゆ・砂糖・みりんで味をととのえてから、10分ほど煮ます。
※たいたん…京都の言葉で、野菜などを煮たもののこと。

とうがらしのニックネームが全国区に
京都の八百屋さんでは、 細長く先のとがった伏見とうがらしを「ヒモ」、先の丸い鷹峯とうがらしを「クジラ」と呼んできました。田中(山科)とうがらしは先端が獅子(しし)の口のような形をしていることから「シシトウガラシ」。それが全国で栽培されるようになって、今の「シシトウ」になったそうです。

賀茂なす
まんまるな形が印象的な大ぶりのなすで、風格、味わいともに「なすの女王」といわれています。水の豊富な上賀茂一帯でのみ大切に栽培されてきました。 肉質がよくしまっているので、煮たり焼いたりしてもくずれにくいのが特徴です。

【産地】上賀茂、亀岡、綾部
【旬】 6~9月
賀茂なす
賀茂なすの田楽
上下を切り落とした賀茂なすを横三等分の輪切りにし、油を熱したフライパンで焼きます。赤味噌に砂糖・みりん・酒を加えて加熱し、田楽みそをつくります。焼いたなすに田楽みそを盛り、ゴマや山椒を飾ります。

鹿ヶ谷かぼちゃ
鹿ヶ谷かぼちゃ ユーモラスなひょうたん型が特徴的なかぼちゃ。江戸時代に東北から持ち帰られた、菊かぼちゃの突然変異だといわれています。毎年7月25日に鹿ヶ谷の安楽寺で中風封じを祈願する「かぼちゃ供養」で甘く煮たものがふるまわれますが、実際、成人病予防に効果のあるリノレン酸が豊富に含まれています。味そのものはごく淡白です。

【産地】綾部
【旬】 7~8月

壬生菜
水菜から自然に生まれた野菜で、ほんのりからしの香りがあり、ビタミンCや食物繊維が豊富です。 壬生村(現在の中京区壬生付近)で多く栽培されたことからこの名がつきました。鍋物、和え物、一夜漬け、サラダなど、さまざまに調理できます。

【産地】 羽束師(はづかし)、大原野、南丹
【旬】 10~3月
壬生菜
おあげと壬生菜のたいたん
短冊に切った油揚げを、砂糖・塩・しょうゆで味をととのえただし汁でふっくらと煮て、そこに3~4センチにざく切りした壬生菜を加え、さっと煮ます。
※たいたん…京都の言葉で、野菜などを煮たもののこと。

やまのいも
やまのいも 一般に「つくねいも」とも呼ばれる丸いもの一種で、明治の終わりごろから京都府の北部、宮津で栽培されるようになりました。宮津粟田地区の水はけがよく、常時適度な湿りがある、いわゆる「いも地」で育てられたやまのいもは、肉質がしまって粘りが強く、 滋養強壮に役立つといわれ、高級贈答品として用いられてきました。

【産地】 南丹、宮津
【旬】 10月下旬~11月(出荷は5月ごろまで)
とろろご飯
皮をむいてすり鉢で根気よくすり、濃い目に味つけしただしでのばし、ご飯にかけます。麦ご飯がよく合います。

九条ねぎ
古くから京都市南区の九条あたりで栽培されていたことから、この名前がつきました。現在では一年中出回るようになりましたが、寒くなって霜が降りると、葉の内部のぬめりが増え、さらにおいしくなります。やわらかくて甘みのあるネギで、薬味以外にも鍋や煮物、和えものと、多様に用いられます。

【産地】 久御山、鳥羽、八木
【旬】 11~2月
九条ねぎ

聖護院だいこん
聖護院だいこん 尾張の国から伝わった長い形の大根を、現在の京都市左京区聖護院あたりで栽培するうちに、丸い形になったと言われています。苦みや辛みがなくほんのりと甘いのが特徴です。 長時間煮ても煮くずれしないので、おでんなどの煮物に最適です。

【産地】 城陽、久御山、亀岡、京丹後
【旬】  11~1月

野菜写真提供/京のふるさと産品価格流通安定協会

今回、ご協力いただいたのは
京都 錦かね松 上田欣司さん 京都 錦かね松 上田欣司さん
「季節限定だった京野菜にも、季節を問わず手に入るものが増えてきましたが、おいしいのはなんといっても旬の野菜。初めて食べるなら、ぜひ旬の露地ものを召し上がっていただきたいですね」
父である三代目当主上田耕司さんのもとで八百屋の修行をするかたわら、京都府立大学大学院で京野菜の定義について研究中。また、京野菜をふんだんに使ったお昼ごはんを提供する“やお屋の二かい”と、夕ごはんメインの“やお屋のはなれ”の企画運営も手がけています。
  京都 錦かね松
明治15年創業、錦市場の老舗。厳選された京野菜を扱う
京都市中京区錦小路柳馬場西入 TEL:075-221-0088 営業時間/10時~18時
京野菜を使った料理を味わう
京野菜は懐石のような高級料理にかぎって使用されるものではなく、ふだんの食卓にのぼる家庭料理としても健在です。身近な「おばんざい」で京野菜を味わってみてはいかがでしょうか。
■やお屋の二かい
京野菜をふんだんに使ったお昼ごはんが人気
京都 錦かね松内 075-221-0089(予約専用)
予約受付時間/9時~18時
営業時間/11時~売り切れ次第終了
定休日/不定休

長寿ランチセット/税込2,100円
(日替わりのおばんざい5品と、月替わりのたき込みご飯、
自家製の漬物とデザート付き)など
やお屋の二かい
■やお屋のはなれ
京野菜を使った夕ごはんを中心に提供
京都 錦かね松向かい
TEL:075-221-0089(予約専用)
予約受付時間/9時~18時
営業時間/17時~20時
定休日/不定休

菜々膳/税込4,000円 など
やお屋のはなれ 菜々膳

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